【福祉から雇用応援事業】B型就労支援の現場から vol.1「支援事例レポート」(2015/12)

【福祉から雇用応援事業】B型就労支援の現場から vol.1「支援事例レポート」(2015/12)

京都府障害者「福祉から雇用」応援事業 支援事例レポート

京都府障害者「福祉から雇用」応援事業は、平成25年8月以来、多くの事業所にご利用いただいています。以下に、事例の一部をご紹介させていただきます。

【事例】ジョブマッチングとフォローアップの形成に重点を置いた事例〜生鮮食料品専門スーパーで働く知的障害を伴うAさんの事例

1:本人の状況

①障害の特性とパーソナリティ

本事例のAさんは、療育手帳を所持し障害基礎年金を受給している20代の男性です。同世代の仲間との会話は弾みますが、顔を合わして話すことと計算が苦手でした。また、悩みを自己で抱え込む傾向がありました。

②福祉施設の利用

支援学校高等部を卒業後すぐに、社会福祉法人が運営する就労継続支援B型事業所に週5日通所していました。担当は「パン班」で生地づくりを担当していました。同時に、毎週土曜日は地域の公共施設(公園等)の清掃にも参加していました。

③職歴

一般就労も福祉的就労も経験はありませんでした。また、企業に於ける実習体験もありませんでした。

④生活状況

自転車で通える半径に職場も実家もありますが、グループホームに入居しています。グループホームでの生活は、B型事業所の通所時代から現在も続いています。金銭管理は、預貯金を預ける・引き出す・残高を確認し計画的に買い物をする等は理解していました。身だしなみに課題が見受けられました(清潔感・TPOにあわした服装=どこでもジャージ)足の巻き爪の治療に通院していました。完治に何カ月かかるのか?そもそも完治するのか?わからない状況でした。(常に患部を清潔にしないといけないため、良くなったり悪化したりの繰り返し)

2:一般就労を目標とした事業所内での支援

①インテイク面談の評価

インテイク面談での評価項目におけるAランクは、
◆時々見せる笑顔が素晴らしい
◆話を理解しようとする姿勢(でも・だって・そやけど等の発言は1度もない)
◆就職に対する想いは熱い(家族を自分が支えるようになりたいという願い)

②技能取得のための支援

通所していたB型事業所では、Aさん本人の希望から、パソコンの基本スキルを取得するため、B型事業所内でワードやメール・ネット検索の基礎講習会を開講していただきました。今では「手紙やメールが好き」と自分自身から言えるほど長文の作成も得意です。

③アセスメントの代用としてジョブカードの作成を支援

ジョブカードの作成を通じて、自己分析(得意・苦手、強み・弱み)に取り組み、なりたい自分のイメージができるような支援を実施しました。同時に様々な障害者雇用の求人票を(業種・職種・勤務時間・通勤場所等)閲覧し、職種や職場環境をイメージする幅を広げる支援を実施しました。

④面接ロープレイによる支援

徐々に顔を合わして会話ができるようになったAさんに、上記③を基にした面接ロープレを定期的に実施しました。主な目的は、自己の体験を自分の言葉で語れるようになることと姿勢や身だしなみの改善でした。また、実際の面接会場を見学して(企業面接会)「身だしなみが如何に大切か」の理解を促しました。

3:就労支援のネットワーク形成

①障害者就業・生活支援センター「はぴねす」に登録と同時に所轄のハローワークに登録。

(1職場見学 障害者雇用に前向きなリネン工場の見学
(2障害者就活セミナーの受講
(3雇用前提の企業実習に応募(梱包業)不採用
書類審査と面接試験を通過し3日間の実習採用試験に挑戦(ねじやボルト・ナットの箱詰め)企業との申し送りにつき初日と最終日に支援員が同行。

【チーム会議での反省ポイント】
Aさんの足の具合を考慮し、立ち仕事を避け、同時に、作業所で培った経験を活かしてルーティン的な業務がマッチングするものと思い込みを反省。

(4生鮮食料品専門スーパーに応募

(職種:店舗内外の清掃、カゴ・カート回収、ポスターの貼り替え、リサイクルボックスや駐輪場の管理等)
書類審査と一次面接に突破後、採用実習試験に挑戦。
(参加者4名・午前8時〜12時・5日間、期間中、職場定着支援員が同行)
結果:応募者4名のうちAさんのみ採用。3ヶ月のトライアル雇用となる。
(月曜〜金曜 午前8時〜12時、週20時間)

【職場定着支援員との連携強化】
障害者雇用に理解の深い店長と職場スタッフとのコミュニケーションのサポートや、「はぴねす」就労支援員・ハローワーク専門相談員・京都ほっとはあとセンター就労支援員との連携の中心を、「はぴねす」の職場定着支援員が担当することにより、職場での様子をしっかりと把握することができ、実習初日・中日・最終日でのふり返りに役立てることができました。実習後のAさんの感想は、「①ひとつの作業ではなく、数種類の作業を受け持つほうが自分に合っていると発見した。②お客様やスタッフと声をかけあうことが嬉しい」でした。

◆トライアル雇用の後、正式に雇用契約
(日月休み週5日出勤、午前8時〜午後2時・休憩30分、週27時間30分勤務)

4:定着支援 フォローアップ体制

定期的に職場定着支援員の派遣にとどまらず、「同時に複数から違う指示があるとわかりづらい」との悩みを訴えた時には、即日、「はぴねす」の職場定着支援員が訪問しました。また、月に1度の「はぴねす」での仕事や生活面の個別相談日の欠席は一度もありません。

5:現在

正式雇用から丸1年が過ぎた今日、障害者の職場実習の指導にもあたり、店長やチームリーダーからの信頼も厚いです。お客様の声ボックスにも「あいさつが心地よい」「ちょっとした気配りが嬉しい」との感謝の声が寄せられています。上司や先輩からの「助かったよ、ありがとう」の声に励まされ、訓練中の課題のひとつであった指示待ちの姿勢は改善され、率先して職務にあたり、接客や問合せの応対に能力を発揮しています。
「はぴねす」就労支援員によるAさんの職務評価は、「忙しくなればなるほど笑顔が増える」とのコメントも頂いています。

6:まとめ

働く場が変われば、その中での役割やふるまいも変わることはあります。変わることもあれば、共通していることもあるかもしれませんが、環境が変わったことで見つかった潜在的な能力は、その職場で発揮されやすく、雇用につながったと思います。