【福祉から雇用応援事業】B型就労支援の現場からvol.3 就労支援でMくんが育んだ感謝の気持ち

【福祉から雇用応援事業】B型就労支援の現場からvol.3 就労支援でMくんが育んだ感謝の気持ち

【福祉から雇用応援事業】B型就労支援の現場から

就労支援でMくんが育んだ感謝の気持ち

Mくんのお母さんから「○○さんに感謝している」とのMくんの気持ちを聞かされたとき、就労担当の○○さんも、「福祉から雇用」支援員の私も、何ともいえない幸せな気持ちになりました。  
就労支援を始めて2年5ヶ月、やっとMくんの就労実現を目前にした母親面談でのことです。Mくんは自分の考えに固執するあまり、いつも他人の言動にイライラしていたので、この変化の報告を喜ばずにはおれませんでした。

就労支援開始当初、発達障害の傾向が見受けられたMくんの言動は、たびたび周囲のヒンシュクを買っていました。就職したいと言いながら、施設内外でふるう暴力・暴言のたびに就職活動は中断を余儀なくされ、「就職はムリやろ〜」「もう就労支援はやめたら?」というのが大方の周囲の反応でした。そんなMくんの暴言・暴力に耐えながら、「就職したい」というMくんの夢や希望を叶えるために奮闘してきた○○さんに、いまMくんが「感謝している」と言うのです。

お母さんの話は続きます。以前のMくんは職員や他の障害者の言動が気に障り、毎日のように家でぼやくので困っていたそうです。ところが最近になって「今日は職員が休んだので△△さん一人で大変そうやったわ」などと職員をねぎらう言葉が多くなったというのです。

なにがMくんを変えたのでしょう? なぜムリと思われたMくんの就労が実現したのでしょうか? そこには、就労支援を通してMくんが培った“変わらないもの”と“変わるもの”が垣間見えました。就職活動が順調な時もそうでない時も、Mくんの「就職したい気持ち」がブレることはありませんでした。そしてMくんの傍には、いつも「Mくんは就職できる!」「B型ではMくんの力を充分に発揮できない!」と信じる○○さんが寄り添っていました。そんな二人の変わらない就労への気持ちに支えられて、「福祉から雇用」支援員の私も役割を果たせたのではないかと思っています。

このMくんの就労実現に向けてのエネルギーのスパイラルは、各就労支援機関の担当者を巻き込んで大きな渦となり、様々なチャンスを引き寄せ始めたように思います。Mくんの就労支援には、B型事業所の職員〇〇さん、「福祉から雇用」支援員の私、そして下記のような方々がチーム支援に加わりました。

「京都ジョブパークはあとふるコーナー」キャリアカウンセラーさん―――就職活動のためのカウンセリングをしていただきました。

はあとふる雇用支援員の方―――実習先や雇用先の紹介、Mくんを雇用することへの企業の不安を払拭するために尽力していただきました。

はあとふるジョブサポーターさん―――たびたびMくんの実習に付き添ってサポートや観察を行い、成果や課題を報告していただきました。

「京都障害者職業センター」職業カウンセラーの方―――Mくんの「職業評価」を実施していただき、「職業準備支援」のセッティングや施設訪問までして指導していただきました。

「京都障害者職業相談室」就職支援コーディネーターの方―――Mくんの要望に添った求人情報をピックアップし、面接に向けて企業との調整をしていただきました。

Mくんのために心を砕いて支援した人達のことを聞いたお母さんは、「こんなにたくさんの人に支援されたなんて知らなかった……」と驚かれました。
でも結局は、Mくん自身の“変わるべきもの”と“変わらざるもの”が作動しなかったら、就労は実現しなかったのだと思います。そして、この就労支援における支援者の役割は、Mくんがこれまでの自分へのこだわりを捨てて、安心して自分を変容させる土壌を作ることだったような気がします。仕事とはいえ、これだけ多くの“他人”がタッグを組んで叶ったMくんの就労は、これからが本番です。就職後の職場定着のために、ご家族の影響力は計り知れません。
ご家族の支援の大切さと役割を伝えたくて、最後にMくんのお母さんにお会いしました。(K)