城陽作業所

花や野菜作りを通して、地域共生型の農園に

毎年公募する地域ボランティアとともに、「ふれあい農園」で花や野菜を育てています。農園があるのは、城陽市南部の丘陵地に広がる青谷梅林のすぐそば。地域住民の散歩コースでもあり、季節の野菜や花が彩る農園は、地域の人たちのいこいの場となっています。

 

利用者と地域のボランティアが一緒に作業

ほっとする空間 城陽作業所「ふれあい農園」

春先には1万本の梅の花が咲く、京府内最大の梅林・青谷梅林。毎年、2月下旬から1ヵ月に渡り開催される「青谷梅林 梅まつり」には、多くの観光客が訪れます。その青谷梅林の入口付近に「ふれあい農園」はあります。作業所からは歩いて約20分。生活支援員の鈴木智仁さんの案内で農園に着くと、パンジーが植えられたプランターの前に、女性が屈んで花がらを取り除いていました。「通りかかったら気になって。きれいにしとこと思って・・・」。鈴木さんに話かけたその女性は、利用者さんの保護者だそうです。農園の周りは散歩する人も多く見かけます。民家に囲まれた、こじんまりとした畑にビニールハウスやトイレもあり、キウイ棚や柿の木もある、何とも居心地のいい、ほっこりできる農園です。
「ふれあい農園」は毎年、市の広報や新聞記事を通して、市民ボランティア約15名を公募。4月からの1年間、毎週火曜日の午前に、野菜の栽培や花の育苗、花壇装飾などを、利用者と一緒に行っています。毎週火曜日の開園ですが、欠席や遅刻は参加者の自由。収穫した野菜は、参加者に販売したり、不定期に地域で販売することもあるそうです。

「ユニバーサル園芸ふれあい農園」は青谷梅園の近くにあるふれあい農園は、民家に囲まれた程よい広さ。地域の人たちの散歩コースでもある

農園の始まりは、1本の電話から

「ふれあい農園」の始まりは平成21年。作業所にかかってきた1本の電話がきっかけでした。名古屋在住の農園の土地の持ち主が、管理ができないため「土地をあげるわ」と寄付してくださったのです。その土地を活用して「地域の中に根差した園芸をやりたい」と農園を始めたのが、京の園芸福祉研究会の理事である現在の理事長。草ぼうぼうで、木もいっぱい生えた状態から、トラクターを借りて土を掘り返し、石拾いから始め、京都府の補助金で耕運機や鎌やハウスなど必要な道具を買ったり、作ったり。元果樹園だった土地は、土が非常に良く、きれいになってご近所さんも喜んでくださったそうです。
施設長の辻村憲隆さんは、「園芸福祉はすべての人々を対象にしており、障害福祉に特化していない。高齢福祉や児童福祉など全部巻き込んで、みんなで連携して地域で何ができるかということに寄与しています。一緒に作業することによって、理解が深まっている。地域共生型社会です」と話します。

野菜の収穫が楽しみ。真っ赤なトマトは一番人気3つの農園を案内してくれた鈴木さん

農園は子どもたちのワンダーランド

「ふれあい農園」では近くの保育園児が春にイモ苗を植え、秋には芋掘りをします。収穫したイモは、家に持ち帰ったり、保育園の給食やおやつになります。農園は園児たちの散歩コースになっているため、自分たちが植えた苗が大きくなっていく様子を日々見ることができます。
「イモを掘るより、虫取りや葉っぱ遊びがメインの子もいます。走り回ってミミズを手にいっぱい集めてる子も。それ、どうする気や?と(笑)。他の野菜を収穫しているのを見に来る子には、一緒に採ってもいいよと声をかけたり・・・」と鈴木さん。辻村さんも「芋掘り招待はよくありますが、うちでは虫取りも遊びもさせてもらえるところが非常にいい」と言われます。苗は利用者も一緒に植え、ボランティアはそのお手伝いをします。
「花が咲いたらプランターを畑の周りに飾って、みなさんがゆっくり歩いて鑑賞してもらえるようにしています」と鈴木さん。作業所からみんなで歩いて来て、農園のイチゴを摘んで食べたりもするそうです。足が不自由な人は、車で近くのグループホームまで来て、そこから歩くなど、運動目的にもちょうど良い距離です。

保育園の園児たちは、芋掘りだけでなく、苗の植え付けから関わるもう一つの農園は、作業所から歩いてすぐ

近所の人が集まる農園に

作業所の農園は現在3か所。「ふれあい農園」の他にも、作業所近くの木津川のそばに2つあります。作業所では農作業の他に、地元青谷の梅を使って梅干しを作ったり、梅の種を特殊炭化炉で焼成した炭丹や、山から切り出した竹で竹炭を作ったりしています。加工過程で割れて商品にならない梅炭は、細かく砕いて畑に撒くと、土壌改善にもなります。また、畑で育てたローズマリーやラベンダーで防虫サシェも作っており、制作中は作業所がとても良い香りに包まれるそうです。
「ふれあい農園」も最初のうちは、「また、何かやってはるわ」という感じで、周りからもなかなか認めてもらえなかったそうですが、最近では地域の方が買いに来てくれるようになりました。「お兄ちゃんらがいはるし、もろとくわ」「この人がいはるし、買ってくわ」と、地域の方が声をかけてくれるようになったそうです。「最近は畑やってへんし、おいしい野菜食べてへんから、ちょうだい」と買いにくる近所のおばあちゃんもいます。トマトは真っ赤に熟した実を収穫するので、おいしいと評判。雨の影響で割れてしまったものは、施設の給食でミートソースの材料に使用したりしているそうです。
「この活動がもっと地域の方に広まって、買いに来てもらえるようになれば。せっかく、地域の中に畑があるので」と鈴木さん。「ふれあい農園」の存在が地域の中心となって、子どもも高齢者も障害者も関係なく、地域コミュニティーの場になりつつあるようです。

3つ目の農園は、川の堤防沿いの砂地の畑梅炭は特殊炭化炉で焼成して再利用

施設案内

社会福祉法人 うめの木福祉会 生活介護・就労継続支援B型事業所 城陽作業所
〒610-0116 京都府城陽市奈島川原口12
TEL:0774-54-2424 FAX:0774-54-0414
URL:http://www.kyoto-umenoki.or.jp/