野田川共同作業所

ネギ栽培でマンパワー発揮。
「なくてはならない」存在に

京都府北部の与謝野町で、九条ネギの育苗から栽培、出荷まで行っています。スーパーや直売所、飲食店への出荷のほか、人手の足らない農家の収穫や定植へ出向くなど、地域のネギ農家にはなくてはならない存在となっています。

 

三、四年前の海洋高との共同研究の画。ヒトデやウニ肥のネギ栽培効果を実証

一連の作業はすべて利用者だけで

ハウスの中では利用者さんたちが、ネギの出荷作業の真っ最中。あたり一面、ネギのいい香りに包まれています。作業台に積まれたネギは根元の土を落とし、汚れたり枯れた葉を取り除き下葉処理、根を1㎝残して切り落とします。きれいになったネギをまとめて計量。飲食店へは新聞紙で包んだり、黒いビニール袋に入れて納品。スーパーや直売所へは、きれいに袋に入れ、ラベルを貼って出荷します。

きれいに処理したネギの計量ネギの根を切りそろえる

 

現在、9名の利用者さんがネギ専属で作業。土作り、種まきから収穫までほぼ全部利用者さんでやれるように支援してきています。支援員の藤岡克彦さんは、「職員がやるのは、トラクターの運転や農薬散布などの危険作業が中心。エンジン、電気ポンプによる漕水作業、自走草刈り機、小型耕転機など小型農業機械は使えるように援助指導しています」と話します。

マンパワーで小口の注文にも対応

ネギの栽培は13年前、別の場所で1棟のハウスを借りてのスタートでした。7年前に現在の場所へ移り、3棟から始めたのが徐々に広がり、今では8棟に増えています。立ち上げのときからの利用者さんも3人おられるそうです。収穫したネギは、宮津市、京丹後市、与謝野町のスーパーやJAの直売所、給食センターへ出荷するほか、法人内の「夢織りの郷」給食やカフェ・花音など6ヶ所、地域の飲食店8軒に納品。また知人を通して京都市内へも販売しています。兵庫県朝来市和田山町のうどん店からも注文があるそうです。販路は、「1店舗、2店舗を確実に続けていると、あとは全部口コミで広がりました。他の農家さんとバッティングしないようにしています。値上げした時一旦注文が途切れた飲食店も、最終的にはまた戻ってこられました」と藤岡さん。飲食店の注文が続くのには理由があるようです。

「例えば飲食店から3㎏のネギの注文があったとして、収穫してきれいに処理し、計量して持っていくのに、1人でやれば半日ほどかかります。機械があれば早いですが、持っていない農家さんがほとんどです。その点作業所は人がいるので、注文が入れば昼には持って行けます。農家さんは大口の対応をしながら、飲食店の小口対応をすることが難しい。作業所はマンパワーでやれます」。さらに無農薬・減農薬、科学肥料を多用せず、太くしないで柔らかい時期に出荷するなど、ネギの質にもこだわっています。出荷先の岩滝小学校からは、毎年お礼の児童作文が届けられます。

ハウス内を案内してくれた藤岡さん汚れたり枯れた下葉を丁寧に取り除き出荷

「いなければ困る」と言われるまでに

もともとネギ農家は少なかった野田川地区ですが、最近は若い新規農家も増え、ネギ栽培から始める人も多いようです。手が足らないネギ農家さんへは技術提供という形で、お手伝いに行くこともあります。苗屋さんから「忙しい5月に3週間だけ誰が来てくれないか」という依頼には、利用者さん本人が直接現場へ行って、帰ってくる形で対応。また、天候などの影響で、畑のネギがたくさん倒れたときにも、加工の依頼や飲食店から声がかかります。

「ネギが倒れてしまうと、デパートやスーパーには出荷できず、加工用や飲食店向けになるのですが、農家は販売ルートを持っていたとしても作業が大変で対応できません。それで、野田川さん何とかならへんかと声がかかるようになるのです」。倒れたネギは抜いて土にすき込むしか仕方がないのですが、「極力そういうものは、うちで何とかさしてくださいと声をかけています。ほとんど断ることはありません」と藤岡さん。倒れたネギをみんなで収穫して持ち帰り、きれいにして飲食店などに納品。ここでもマンパワー発揮です。

ハウス8棟のうち1棟は育苗用。育てた苗はネギ農家さんへ。中には、苗を持って行って定植まで依頼される農家さんもあります。「作業所さんがいるととても助かる」と言う農家さんも増えてきているそうです。

露地栽培のほか、ハウス8棟でネギ作り育苗用ハウスでは、苗がきれいに育っている

必要とされる喜びが力に

「ネギを通じてここまでいろんなことができるとは、思っていませんでした」と藤岡さん。作付計画は職員も一緒に考えており、2畝ずつ時期をずらして植え付けるなど工夫しています。それでもどうしても品切れしてしまう時もあり、そんな時は農家さんに声をかけると「なんぼでもあるで。ようけ採って使ってや~」と言ってくれるとか。おかげで、なんとか1年を通じて出荷ができます。

ネギ以外にも、チェーンで除草したり、布綿マルチによる無農薬の米作りにもとりくんできています。籾が植え込まれたロール状の綿布を広げるだけ。除草剤も農薬もやらずに育てられる優れものです。有機JAS認定も視野に入れた栽培として、地域の大農家さんと共同で取り組んで、注目を集めています。山田地域の営農組合からは、来年はホ場をさかすからその農法を紹介して欲しいとの依頼もあり、利用者さんの希望でタマネギ、ニンニク、サトイモの栽培にも現在挑戦中です。

最初はできなかったことも、1年1年やっていくうちに、作業できるようになりました。藤岡さんは、「暑いし、寒いし、厳しい労働の中でも、一から十まですべての作業に関わり、最後にお金を受け取るところまでするので、労働一つ一つの意味が理解しやすいのでしょう。それが喜びとなっています。また地域から必要とされているという喜び、誇りがもてます。だから、どんなに寒い中でも、しんどくてもやるのでしょう」と言います。地域の農家さんが、「近くに来たんだ。元気か~。寒いのにようやってるなぁ。お菓子買ってきたで」と立ち寄ってくれることもあるそうです。

地域の農家さん、販売先から頼りにされている野田川共同作業所ハウス班は、さらに地域になくてはならない存在になろうと日々奮闘しています。地元出身者で滋賀県からUターンし、野田川共同作業所の隣で農業を始めたある農家さんは、「あなたたちがいたから、始めたんですよ」と話されたそうです。ネギ作りを通してみなさんのパワーが、地域の人と農業にチカラを与えているように思います。

露地栽培の人参を収穫中。雪の中でも作業を続けるネギ以外の野菜も出荷

※取材当時は「野田川共同作業所」で業務を行っていましたが、現在は「リフレかやの里」へ業務移管しています。

施設案内

社会福祉法人 よさのうみ福祉会 就労継続支援B型事業所 野田川共同作業所
〒629-2402 京都府与謝郡与謝町字算所小字平田421
TEL:0772-44-1545 FAX:0772-44-1750