たのしくはたらく

他農家や事業所とのコラボ、
チーム制で多品種な野菜作りに挑戦

亀岡市北部の大小6つの耕地で農業活動をしています。より効率的にそれぞれが能力を発揮できるよう、チームを組んで作業。買い手のニーズに合わせた多品種の野菜や他では作らないもの、小粒の黒豆「こまめっこ」など、他の農家や作業所との連携栽培にも積極的に取り組んでいます。

 

一番最初に借りたA耕地。山手に朱い鳥居が見える

最初に借りた2反の畑が野菜作りの原点

亀岡市大内(おおち)にある 「株式会社 みんなではたらく」 就労継続支援A型事務所 「たのしくはたらく」 は、亀岡市で最初のA型事業所として、2013年5月に設立されました。素敵なログハウスの事業所は、バブル崩壊直前に建てられたという元別荘。地域一帯に十数軒並ぶ別荘風の家のほとんどが、今は他地域から移り住んだ子育て家族が暮らしているそうです。

そんな別荘群のすぐ裏手に広がる農地が、みんなの仕事場。一見、大きな一つの農場のように見えますが、それぞれ地主さんの違う6つの耕地が並んでいます。代表の塩谷隆好さんに農場を案内してもらいました。「最初は一番上の2反(A耕地と呼んでいます)と家庭菜園みたいな0.5反(F耕地)を借りました。高く売れるものを作ろうと、黒豆やモロッコインゲン、空豆などを・・・。それが1年目です」。

今では夏にはトマト、ナス、キュウリ、坊ちゃんカボチャ、小玉スイカ、万願寺トウガラシなど、秋冬野菜はネギ、水菜、菊菜、ホウレンソウ、にじいろ菜、ラディッシュなどを栽培。買い手のニーズに合わせ、小さ目の食べきりサイズの野菜を中心に育てています。A耕地は最初の耕作地であり、野菜作りの原点。この畑にいると全員が、「ほっとする」そうです。

小さなF耕地は、春には豆類、夏にはパプリカ、ズッキーニ、冬は聖護院大根、カブ、タアサイなどを植え、上手くいけば、大きな園場で作るための実験農場。その他、近所の園児の芋掘り会場にもなっています。

家庭菜園的な小さなF耕地。園児の芋掘り会場にも毎年、近くの保育所の園児たちが芋ほりにやって来る

次々に借り足して増えた農地

現在の農場は、もとはすべて休耕地。1年目の終わりごろ、「一番上の畑(A耕地)のすぐ下の農地の地主さんが来られて、『よかったら、うちも使ってくれていいで』と。これで2反増えて(B耕地)。その下も借りたいが…と言うと、直接交渉すればいいと地主さんを紹介してくれた」と塩谷さん。地主さんに会いに行って話すと、貸してくださることに(C耕地)。その後も、借りたいと思った耕地の地主さんと話をすること数回でDやE耕地などを確保。地主さんたちは「草を生やさず、まじめに使ってくれるなら、使ったらええがな」と。どんどん増えて、結局12反まで広がりました。「まじめに使っているので、地主さんからのクレームはなし。会うと、頑張ってるみたいやなと言ってくれます」。

こうして借りた耕地のうちB耕地は、神前(こうざき)という隣の集落のある農家と一緒に、個人宅配や数件のレストラン販売向けの契約栽培に利用。C耕地は、黒豆専用の畑。丹波黒のほかに、亀岡の3つの作業所だけで栽培している小粒の黒豆「こまめっこ」を、D耕地には昨年は大量にタマネギ、ニンニクなどを育てていました。

F耕地では、「百姓をするからには、やっぱり米も」と塩谷さんの提案で稲作を開始。農協や地主さんに教わりながら、田植えから稲刈りまで。収穫したお米は完売し、「亀岡のお米、おいしかった。また買いたい」と好評だそうです。

チーム制で農業活動を実践する代表の塩谷さん F耕地は塩谷さんの提案で水田に

チーム制で効率よく作業

塩谷さんと仲間2人だけで「そこそこ広さのある畑(A耕地)を、鍬でひたすら耕した」という初年度は、働く仲間は6~7人。今では仲間も21人に増え、もらい物のトラクターも活用。5つのチーム制で活動し、2チームは神前耕地の指定の野菜作りに従事。神前耕地では、取引先のニーズに合わせた多品種の野菜を計画的に栽培しており、きちんと土作りして良い野菜を育て、袋詰めもきれいに仕上げます。そこには日々、6~7人が就労しています。

残る3チームのうちの1チームは、「支援チーム」と呼ばれ、塩谷さんの支援のもと、ほ場全体の草刈やイノシシ除けのネット張り、その他雑用などを行っています。支援チームは、黒豆、チョロギ、水田など、植えてから収穫までほとんど手のかからない作物を栽培し、その他は支援に回ります。他の農家が作りたがらない鷹の爪や小粒の黒豆など、収穫・選別など作業が大変な作物もいとわず取り組んでいます。

「農業活動では、植えて、育てて、収穫して、販売前の段階まで、きちんと段階を追っていろんなことが理解してもらえる。今の仲間は、収穫するまでの一連の作業はある程度できるようになりました」と塩谷さん。ただ、袋詰め作業が苦手な仲間もいるので、「ニンジン2キロ、ジャガイモ5キロとか、大きな袋に入れてまとめて出荷できるような、給食センターやその他大型需要先などに販路を広げたい」と話します。

丹波黒や小粒の丹波黒「こまめっこ」なども作る専用の畑C耕地「こまめっこ」の小さな鞘から一粒ずつ豆を出す作業

どこにも負けない野菜作りと事業所間連携をめざして

ここで採れた野菜は、亀岡市篠町の直売所「たわわ朝霧」や京都市内の無農薬野菜販売店、無農薬野菜を中心に扱う大型卸売店で販売するほか、レストランや個人宅、東京にも定期的に発送。京野菜・無農薬野菜を積極的にアピールし続けているので、将来的には有機JASの認定や2020年の東京オリンピックへの納品もめざしているそうです。

さらに「農業活動をしている作業所や農家さんとも連携していきたい」とも。現在、原木シイタケを他の事業所から仕入れて販売もしていますが、「自分のところが得意なもので専門性を出し、どこにも負けない品質で『うちはコレだよ』と言えるものを作りたい。どの事業所でも売上を確保できるようにし、もっと専門的な形で組んでいきたい。余っている野菜を分けるのではなくて、他に負けない強い野菜を作り、お互いが棲み分けできるような形でできれば・・・。農福連携とは、農業と福祉がイベントなどで単につながることではなく、本当は、その地域を元気に豊かにするためのひとつの方向なんだと思っています」。塩谷さんの挑戦は続きます。

もらいものトラクター "青"葉物類は袋詰めし、シールを張って出荷

施設案内

株式会社 みんなではたらく 就労継続支援A型事業所 たのしくはたらく
〒621-0231 京都府亀岡市東本梅町大内大坪101-35
TEL/FAX:0771-26-2015
URL http://tanoshiku.kyoto.jp/
https://www.facebook.com/tanoshiku250501/