みらい学園

農作業も営業も、団結力はナンバーワン

JR福知山駅から線路沿いに歩いて約20分。住宅街にある学園の生徒は、車で畑へ出かけます。休耕地を一から開墾し、山から切り出した木で農機具小屋を建て、草刈機も使いこなす、福知山のスーパー仕事人、地域の畑の強力な助っ人「みらいさん」です。

 

みんなでせっせとネギ植え

みんなで居場所を作ってきた

「みんなでいると笑っていられるし、力強い」。そう話すのは、みんなから「あけみ先生」と呼ばれている、みらい学園理事長の大槻あけみさん。同じく学園の職員であけみさんのご主人は「校長先生」と呼ばれ、職員はみんなのことを「生徒さん」と呼んでいます。

みんなから「あけみ先生」と呼ばれている理事長の大槻さん(左)大きな葉を広げた立派な白菜

 

2010年に別の場所で設立された「虹の分校」が経営不振のため解散し、大槻さんを含む数人の職員が引き継ぐ形で2011年に始めたのが「みらい学園」。前の施設が解散した時、「みんなで一緒に働きたい」という生徒や保護者の希望もあり、場所探しからのスタートでした。最初に借りた空店舗も、汚い場所を職員・生徒が一丸となり2カ月かけて磨き、ペンキを塗って「みんなで居場所を作った」そうです。現在の場所に移ってからも、最初は地域の理解がなく、ひたすらクリーン活動から始めました。そのうち、地域の人たちから声がかかるようになり、資源回収、掃除、イベントの飾りつけ、荷物運びなどの仕事を受けるようになりました。

畑の開墾作業から山の整備まで

ちょうどそのころ、福知山市三和町の「三和ダッシュ村」(耕作放棄地を開墾し、無農薬無化学肥料で野菜を栽培・販売)の開墾が始まり、甲子園5個分の広大な敷地の開拓を手伝うことになりました。草を刈り、職員がトラクターを運転する後ろを石拾い、畝作りまで2年半。さらに野菜の植え付け、栽培、仕分け、発送用の箱詰めなどに関わってきました。その後、校長先生(大槻さんのご主人)の実家の畑で野菜作りをすることになり、綾部市の牧場から牛糞を、養鶏場から鶏糞を、親戚の豆腐屋さんからおからをもらって肥料にし、無農薬栽培を続けています。
スタッフの一人は、農業大学出身で就農希望だった若者。校長先生も実家で農業を手伝った経験があったので、農業に取り組むための人材面では恵まれていました。おまけに、高齢化の進む地域では、何かと人手が必要でした。にぎやかに生徒を連れていくので、近所の人たちがいろいろ教えてくれたり、「体力がないので草刈をやってくれないか」と頼まれ、その代わりに畑を貸してもらえたり。高齢化で整備できていない山の間伐をする代わりに、切り出した木材をいただいたり。ナラの木はシイタケの原木になるのでシイタケ栽培を、残りの木は薪にしました。近隣の山や堤防の草刈など、仕事はどんどん広がっていきました。

山の間伐作業で出たナラの木で 原木シイタケ作り原木シイタケはおいしいと評判

生徒さんは、一緒に働く仲間

畑で作業してると「お~い、1人貸してくれや」と、ご近所さんが生徒を軽トラックで応援に派遣することも。派遣(?)先で、倉庫の片付けや野菜の収穫のお手伝いをするようです。
「自閉症で挨拶もろくにできなかった生徒が、そのお手伝いが楽しいと感じたら、コミュニケーションを取りたいと思うようになるようです。『やりたいと思ったら、自分から手を挙げないと行けないよ』と言っていると、だんだん主張するようになって・・・。今は率先して近所のおっちゃんの応援に入っています(笑)。こっそりおやつをもらったりするのも、うれしいようで。自分を頼りにしてくれる、人の役に立てるのがうれしいのでしょうね。今ではリーダー的な存在で、職員がいない間『ちゃんとみんなをまとめておいてよ』と言えばと、きちんと仕事ができるぐらいになっています」と、大槻さんが語ってくれました。
「草刈機を使いたいと言う生徒に訓練を続けていると、だんだん責任感も芽生えてきて、『これが得意だ』という自信を持つと、私たちでもできない草刈機の刃の交換までできるようになって」。オイルを足したり、事前の点検なども一人でやるそうです。調子が悪くなったときは、早めに職員に伝えるようになり、「草刈機を使うのは危ない仕事だけど、1人もけが人を出すことなくやっています。支援と言うと、してもらう側という感じがあるけれど、私たちも生徒さんにしてもらうこともあるし、今は一緒に働く仲間という感じ」と大槻さん。一人一人の力が確実についてきているようです。
 
収穫を待つネギ畑ハウスの組み立てもみんなで協力して

地域の力強い応援で、強まる団結力

「一人一人差はあるけれど、どの人が欠けても仕事は成り立たないのだよと言って仕事をしています。何かあったときの団結力はすごい」と大槻さん。
 3年前の夏、福知山を襲った豪雨で、みらい学園の事務所は壊滅状態に。「そのときも強かった。みんなでここをきれいにするぞ!って」。生徒さんたちの団結力もさることながら、委託事業でつながりのある地域の企業が水害のニュースを見て、「トラック5~6台でお手伝いを連れて来てくれて」1週間で片付けを終了。さらに1カ月以内に、ボランティアでトラックを借りて、中古の冷蔵庫や書庫を京都や大阪から集めてきてくれたそうです。「そうやって応援してくれる地域や企業さんがいるのだから、恩返しできるように頑張りましょうと、さらに団結力が強まった」と話してくれました。
みらい学園の野菜は評判で、販路も口コミで広がっています。最初のころ、生徒さんを連れて、喫茶店や美容院など一軒一軒歩いて営業した結果です。市内で6店舗の居酒屋を経営する店主は、作物が安定せず不定期でしか納品できない野菜に合わせて、「本日のおばんさい」メニューとして店で提供。「お客さんに評判で、おいしいので毎回完売。お客さんが増えた」と喜んでおられるそうです。
農業をはじめ委託事業も、今では「みらいさんに任しといたら安心」と言われるほどに信頼を得ています。地域の力強い応援のもと、これからもさらにパワーアップして、明るいみらいを切り拓いてくれそうです。

施設案内

特定非営利活動法人  就労継続支援B型事業所 みらい学園
〒620-0056 京都府福知山市厚中町49
TEL:0773-24-8600/FAX:0773-24-8601
URL:http://ameblo.jp/mirai-gakuen
https://www.facebook.com/みらい学園-1627129277615289