ひらぎのワークス TAO

新鮮朝採れ野菜が好評。地域で支える農業

昔ながらの農家も多い賀茂川の上流・柊野地区。地域の人たちによって設立された本事業所は農業と共に歩んできました。事業所近くの5か所の畑で、暑い日寒い日、雨の日も農作業。朝採れ野菜を玄関先まで届ける、一歩進んだ「振り売り」が好評です。

 

畑で収穫した野菜を事業所まで運ぶ

農作業は毎日やることがいっぱい

朝10時を回ると、事業所前はにぎやかです。畑で収穫した野菜を一輪車やカゴに入れて運んでくる人。大根の葉を落とす人、作業場で洗う人。ネギを計量して新聞紙で包み、輪ゴムで留めたり、できた束を運んだり・・・。きれいに水洗いされた野菜は、種類別にかごに入れ、水を切るために立て掛けてあります。20個ほど並んだ発泡スチロールの箱には、新聞に包まれた野菜が配達先別に仕分けられていきます。寒い中での野外の作業ですが、それぞれが担当する仕事をてきぱきと進めています。
「こうして見ると、誰がスタッフで誰が利用者さんか、わからないでしょう?」。所長の堀井雅男さんの言う通り、本当に区別がつきません。「午前中は収穫と配達の準備、午後からは配達と後片付けや翌日の収穫のための準備。夏なら草抜き、水やり。そのほか残渣の片付け、畝上げなど、やることはいっぱいあります」。雨の日もカッパを着て作業をするそうです。

ホウレンソウもたくさん収穫収穫し、きれいに洗った大根

新鮮野菜が評判。個人注文が増加中

ひらぎのワークスTAOは、障害者施設のなかった柊野地区に、障害者の拠り所、道しるべとなる場所を作ろうと、地域の人たちによって設立された事業所です。平成22年の立ち上げ当初から関わってきたメンバーの畑で、野菜を育てて販売。立ち上げメンバーが中心になって進めてきた農業も、今は次世代の若いスタッフが中心となり、栽培計画を立てて生産にはげんでいます。
「ここ数年はある程度の形が整い、賀茂の『振り売り』の一歩進んだ形で、FAXで注文を受け、野菜を玄関先まで届ける形をとっています。野菜がものすごく新鮮と評判です」と堀井さん。配達は月・水・金曜で、個人宅や料理店10~25軒に週1回。1週間前に注文書を送り、朝収穫した野菜をその日の午後に配達します。そのほか、毎週水曜日には「ハートプラザKYOTO 三条店」、木曜日には「左京区役所前」でも販売。新鮮な朝採れ野菜は好評で、販売場所でパンフレットを見た個人の方からの注文が増えているそうです。

個人宅配達用に野菜を仕分ける。朝採れの野菜は、新鮮でおいしいと評判 野菜は「ハートプラザKYOTO三条」でも販売

積み重ねや経験が生きてくる仕事

「利用者さんのなかには、支援学校や町なかでは、なかなか外へ出て作業する機会がなかった方もおられます。けれど、作業所へ来て1年、2年とやっていくうちに、暑い中、寒い中でも健康に作業できるようになる。また、情緒面で不安定なところがある人も、外で作業することで落ち着く、和むということもありますね。外で叫んだとしても、自然に吸収されるところがありますが、四角い部屋の中では、『だめ。座りなさい』と言われてしまう。そういうことがないので、落ち着いてくるようです」と堀井さん。野外で作業することで、心身ともに健康でいられるようです。さらに、「やることは非常にわかりやすく、『これを運んでください』『これをこうしてください』と伝えてやってもらうので、仕事としても取組みやすい」と話してくれました。
また、幅広く仕事ができる人や何年かかけてできる仕事が増えてきた人には、任せられる仕事も増え、それによって「自分は役割を担っている」という自信にもつながります。畑仕事については「去年の今頃はこれを植えたね」とか、「この場所にはこれだけ畝を作ったね」など利用者さん自身が覚えていることもあり、新しく入ったスタッフが逆に利用者さんに教えてもらうこともあるとか。「農業は、積み重ねや経験が生きてくる仕事だと思います」。

ネギを計量して新聞で包み、輪ゴムで留める 収穫したあとの白菜の残渣を集める

地域の人たちに見守られながら

お昼前には野菜の配達準備がすべて終わり、スタッフの一人が事業所前の畑を小型耕運機で耕し始めました。小型耕運機やトラクターなどは、事業所立ち上げのメンバーが貸してくれたり、やめられた農家さんから譲ってもらったものだそうです。
ある地域に突然施設ができると、地域の人から反対されることもあると聞きますが、「ここは地域の中の人が立ち上げた事業所なので、畑で作業していても地元の方が『ここは、こうするんやで』と教えてくれたり、とてもフレンドリー」と堀井さん。毎日散歩するお年寄りが声をかけてくれたり、通学途中の子どもたちも挨拶してくれるそうです。利用者の方も畑への行き帰りに、すれ違う人に明るく挨拶をしています。
地域外からボランティアで来られている方もおられます。週3日お手伝いされている元高校教諭の女性は、左京区から。「ハンディのある人たちと接するのは初めてですが、いろいろ勉強になり、とても楽しいです」と話してくれました。
「外で作業していると、やっていることが周りからも見えるので、理解があるのかも。耕作畑が少なくなってきている中で、頑張って畑を続けているということも、いいことなのかな」。かつては田畑が広がっていた柊野地区も新興住宅地となり、どんどん畑がなくなっています。地域の中で生まれた事業所が、地域の人たちに見守られながら畑を守り、地域の人たちみんなの拠り所となっています。

5か所ある中の畑の1つ。周囲は新しい住宅が増えているビニールハウスの中。地面は春夏野菜を植える準備中

施設案内

特定非営利活動法人 就労継続支援B型事業所 京都ひらぎのワークスTAO
〒603-8026 京都市北区上賀茂中山町16
TEL:075-701-6188/FAX:075-701-6388
URL:http://www.workstao.jp